小説

バカ犬とバカ猫〜3章 衝撃の出会い 〜

「おはよ~今日も眠そうだね。」

寝ぼけ眼の僕に仕事仲間達から声がかかる。

「おはようございます。」

僕も挨拶を返す。

広い休憩室の中央テーブルで仲間達と仕事が始まる数分間、雑談をすることが毎朝の始まりだ。

「今日は忙しくなるのかな?」

「今日はまだそんなでもないよ!」

そんな話をしながらも頭の片隅では朝の彼女の事を考えていた。

「もうそろそろ時間だね。」

そう言うと皆、オフィスに向かって行く。

僕もセキュリティーのかかったオフィスのドアを開け、キャビネットの横を歩き自分のデスクに向かう。

まだ眠気が覚めずうつむきぎみに歩く横を、あの清々しい白色に黒いラインが1本入ったスカートが横切った。

眠気は一気に吹き飛んだ。

すぐに顔を上げスカートの女の子を見た。

そこには朝の彼女がいた。

自分の目を一瞬疑った。

「え?なんでここに?」

少しパニックになった僕の時間は止まった。

「朝礼始めます。」

その声で僕の時間がまた動き出す。

毎朝見かけていた彼女はなんと、同じ会社しかも同じフロアーで働いていたのだ。

僕の勤務している場所はダダ広いフロアーに200人以上が仕事内容の違う7~8グループに分かれて仕事をしている、彼女はその1つのグループで仕事をしていた。

「なぜ今まで気付かなかったんだ、こんな近くに居たのに。」

心の中で後悔したのと同時に嬉しさが込み上げていた。

この時、僕は既に引き返す事の出来ない道を歩み始めていたのかもしれない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

バカ犬とバカ猫〜2章 思い 〜

「今日の天気は晴れ・・・・・・・」

テレビから流れる天気予報を聞きながら支度をし

家を飛び出す。

毎日の満員電車にはまだ慣れない。

もみくちゃにされながらやっとのことで乗り換えの駅に着く。

その駅には、ホームの端に立ち23分発の電車を

待つ彼女がいる。

彼女が何処に住んでいて、何処に勤めているのかも僕は知らない。

でもこの数週間、彼女を見かける為に時間を合わせ早めに

家を出る。

彼女が居ないと心配でテンションが上がらない。

「今日は居るかな?」

っとつぶやきながらホームを見渡す。

「あ!居た。」

今日も彼女はいつもの場所に立っている。

それだけでなぜか幸せな気持ちになっていた。

23分の電車が来ると押し寄せる人の波に抵抗むなしくさらわれ、

彼女を見失う。

それが毎日のパターンになっていた。

僕は話した事の無い彼女にたいして特別な思いを

抱き始めていた。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

バカ犬とバカ猫〜1章 出会い 〜

不意にテレビに映った季節外れの打ち上げ花火を見たときに

昔の思い出が頭に浮かんだ。

それは今年の暑い夏、彼女と見た横浜の花火。

浴衣姿の彼女の瞳には空に輝く花火が映り込んでいた。

このときまだ僕はあんなことになるとは知るよしもなかった・・・・・・・・・

彼女との出会いは1年前。

ジリジリジり~目覚ましを叩き止め、僕の新たな1日が始まった。

満員電車を乗り継ぎ新しい会社へ出勤する、プシュ~電車のドアが開き

スーツ姿のサラリーマンが一斉に降りていく。

僕は眠い目を擦りながら登りエスカレーターへ歩き出した。

うつむきかげんの僕の視界に白い物がよぎった、

それは清々しい白色の黒いラインが1本入ったスカートだった。

そしてそのスカートの彼女はすぐに人混みの中に消えていった、

その日から週2~3回彼女を朝見かけるようになった。

サラサラの背中まで長い栗色の髪をなびかせ歩く彼女。

彼女を見かけるのは朝の数分間のみ、

だが僕は彼女を毎朝探してしまうようになっていた。

それが彼女との初めての出会いだった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)